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セミナーレポート
「知って得する・家づくりの新基準」~長期優良住宅とスマートハウス~
2012年9月22日 講師:中村義平二(建築家)
住宅を建てたり購入する場合、構造や施工のレベルについて素人には判らないことが多く、結局は施工業者や販売担当者の言うままに事が運ばれるケースが少なくありません。また一品生産である住宅の品質はどうやって確保したら良いのでしょう。さらに今話題のスマートハウスとは・・・さまざまな疑問について、株式会社空間構造の中村義平二さんにお話しいただきました。
■長期優良住宅優良住宅とは 平成21年6月4日より運用が開始された「長期優良住宅等計画の認定制度」は、長期にわたり良好な状態で使用するための措置を講じた住宅(『長期優良住宅』)の計画を認定する制度で「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」ことにより、環境負荷の低減や国民の居住費負担を軽減し、併せて中古住宅市場の活性化を行いストックビジネスを育成することに目的がある。
具体的な誘導施策として長期優良住宅を建築し、維持保全しようとする建築主・分譲事業者は、認定を受けることによってローン減税、所得税の特別控除、不動産取得税控除額の上乗せなど、税に関する多くの減免処置が得られる。
■住生活基本法 「長期優良住宅等計画の認定制度」の背景となっているのは平成18年6月に施行された「住生活基本法」に盛り込まれた「良好なストックの形成と継承」「良好な居住環境の実現」「多様な居住ニーズへの対応」「運用時のセーフティーネットの作成」がベースになっており、それまでのフロー、すなわち新築を重視した施策からストックを重視した施策への転換が図られている。
平成20年12月、長期優良住宅の普及の促進に関する法律が公布され、翌平成21年6月、長期優良住宅の普及の促進に関する法律が施行され、認定の受付が開始された。
長期優良住宅の認定には一定の条件が定められており、これらをクリアする必要がある。この条件は住宅性能表示制度をベースにしており、この制度の定められた等級以上であることが求められる。
・耐震性 性能表示制度の耐震性等級は1~3まで3段階ある。最も強度の低い等級1は建築基準法を守ったレベルの強度であり、数百年に一度発生する地震(東京では震度6~7の地震)の力に対して,崩壊,倒壊等しない耐力を有するとされている。この等級の場合、崩壊や倒壊はしないが建物は大きな被害を受け、継続して住み続けるのは難しいかも知れない。等級2は等級1の1.25倍の耐力を有する構造で、最も耐震性の高い等級3は等級1の1.5倍の耐力を持つ。長期優良住宅では等級2を求められている。
・省エネルギー性 省エネについては最終的に二酸化炭素の低減につながるため、戸建て集合住宅を問わず省エネルギー対策等級4が必要になる。関東地方で比較的温暖な地域を例に取れば木造住宅の屋根には175mm、壁には85mm、床には80mm程度の断熱材挿入が必要になる。
・劣化対策 劣化対策だが柱や梁などの構造躯体は少なくとも3世代が継続して利用できるよう75年~90年程度強度が維持できることが求められる。性能表示制度で言う「劣化対策等級3」相当に加えて、床下及び小屋裏の点検口を設置床下空間に330mm以上の有効高さを確保する必要がある。
・設備機器の維持管理と更新の容易性 構造躯体に比べて耐用年数が短い内装材や設備機器については清掃・点検・補修・取り替えなどが容易に行えるようになっている必要があり、性能表示制度の等級3が求められている。
・可変性(スケルトン・インフィル) スケルトンとは構造躯体のことで、インフィルとはスケルトンに挿入される内装部材や設備機器である。これらは機器の寿命はスケルトンに比べて短かく、ライフスタイルに応じて更新されることになる。そのためには更新や置き換えが容易にできるように考慮されていなかればならない。長期優良住宅では可変性を確保するための具体的な指針としてマンションなどの集合住宅では階高が2650mm以上であることが求められている。
■バリアフリー対策 長期優良住宅では一般的なバリアフリーは当然導入されているものと仮定しており、戸建て住宅や住戸内部についての条件はとくに定められていない。集合住宅の共用部分について等級3として、高齢者等が安全に移動するための基本的な措置が講じられており、自走式車いす使用者と介助者が住戸の玄関まで到達するための基本的な措置が講じられていることが求められる。具体的には共用廊下と階段の幅、勾配、エレベーター扉の開口寸法などが対象になる。
■長期優良住宅のメリット 長期優良住宅制度を利用することでさまざまなメリットがある。ここでは具体的なメリットについて述べてみよう。
まず、税制面については図「長期優良住宅に対する税の特例」を参照して頂きたいが、住宅ローン減税の600万円という控除額は長期優良住宅の大きなメリットと言えるだろう。また所得税や登録免許税などの諸税についても多くの誘導施策が用意されている。
住宅ローン金利そのものについても優遇措置が用意されている。住宅金融支援機構提携による、最長35年の長期固定金利住宅ローン制度である「フラット35」において長期優良住宅を対象にした「フラット35S」という仕組みがあり、当初10年間の借入金利について優遇を受けられる。 また、「木のいえ整備促進事業」によって補助金100万円を受け取ることができる。これは、中小住宅生産者により供給される木造住宅で、長期優良住宅の認定を得ること、住宅履歴情報の整備、建築過程の公開することが要件でがある。また、構造材などに産地証明があり地域材であることが証明できればさらに20万円の補助金が得られる。
■スマートハウス 家電や設備機器を情報化配線・無線機器等で接続し最適制御を行うことによって、さまざまな利便性の向上やサービスを提供し、合わせて省エネ効果を最大限に得ようとする住宅である。
計画停電のような事態を避けるためには現在の大発電所→高圧送電網→変電所→トランス→家庭や工場という送電方式ではなく、小さな発電単位の集合体による相互融通システムが有効と考えられ、それをスマートグリッドと呼ぶ。スマートグリッドは住宅などの小さな発電単位=送電単位(グリッド)をネットで連結して細胞のように活動させるイメージ。その双方向性の賢いイメージが「スマート」というわけだ。
また、スマートグリッドは次世代送電網と呼ばれ、専用の機器やソフトウェアを介して電力の流れを供給・需要の双方から制御し、最適化できる送電網を構築する技術である。目的はピークシフトによる需要の均斉化、太陽光発電、風力発電、地熱発電など再生可能エネルギーの取り込み、エコカー充電インフラの整備、大規模停電対策等が挙げられる。
スマートグリッドの端末にぶら下がっているのが太陽光発電システムやガスコージェネシステムを装備した住宅、ガスタービン発電機を持つ小さな工場、プリウスなどのハイブリッドやEV(電気自動車)など。自動車がぶら下がっているのは、それが蓄電モジュールだからで、最近発足したトヨタとマイクロソフトの協業についても、スマートグリッドを意識してのことである。
■住宅IT化の姿 ネット家電やスマートグリッドを背景で支えているのが通信技術だ。基幹ネットワークは別として、私たちの眼に触れる機器類はドンドン無線化していくと考えられる。無線技術にはIEEE802.11と呼ばれる無線LAN技術、狭い範囲の通信に特化したBluetooth、TVなどのリモコンでおなじみの超音波通信や赤外線通信等がある。宅内の機器同士を結ぶ通信にはBluetoothが主役になり、ひとかたまりの通信機器はIEEE802.11でルーターや「ホームゲートウェイ」で外部のネットに接続される。
こうした通信インフラに支えられたIT住宅はどのような姿になるのだろう。身近な例から言えば先ずはケーブルフリーではないだろうか。通信のためのケーブルは無線化することで無くなり、機器に接続されるのは電源ケーブルだけになる。この電源ケーブルも容量の大きい電磁誘導方式が実用化すればケーブルが無くなるかも知れない。またすべての家電機器や住まいの電源状態確認、エコレベルはスマートフォンやiPad、PCでネットを介してコントロール可能になる。
電源については各家庭の太陽電池、バイオガスによるコージェネ、風力発電などが地域発電施設と有機的に連携して過不足のない供給が行われることを目指している。
中村義平二(建築家)空間構造代表。一級建築士。
中村義平二(建築家)空間構造代表。一級建築士。
個人住宅の建築設計のほか、住宅メーカーや部材メーカーの商品開発にも携わる。毎年「家づくりの基礎知識」(建築資料研究社刊)の当該年度版を執筆刊行している。そのほかの著書に、「家づくり知って得する500万円」「プレハブ住宅の選び方」など。

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